勝利のラクロスコーチング

ラクロスコーチングのサクセスストーリー! (になればいいなぁ)

選手のケガを防ぐ意外な方法

ケガに悩まされています

人が足りない!

岩手大学ラクロス部(男子)のプレイヤーの人数は現在24人です。ここに1年生が入部すると、30人を超え、多ければ40人程度になります。全国の強豪校はだいたい100人は超えているので、人数的にはかなり厳しい状況です。この少ない人数で勝つにはどのように戦えばいいのか?毎年頭を悩ませています。 

少人数での戦い方

少人数での戦い方は簡単で、2パターンしかありません。

①こまめにフライ(交代)して体力消費を抑えて全員で戦う

②日々のトレーニングで選手達の体力ゲージを高め、主力選手中心で乗り切る

この2つです。

僕の指導方針を知っている人はどっち派かすぐわかると思いますが、僕は基本的には②で戦います。(この理由はまた別の機会に書きたいと思いますが)

しかし、それでもやはり数の多さには勝てません。

仮に、試合に出る主力メンバーが15人だとして、その15人を100人の中から選べるのと40人の中から選べるのとではとてつもないハンデがあります。人数で勝るチームはよほど指導をミスらない限り、少人数チームに負けることはありません。

と、ここまで語ってしまうと負けるチームのヒガミになってしまいますが、僕はこの圧倒的不利な状況からの勝利にこだわっているので、むしろこの状況がモチベーションになっています。この状況で勝てるチームを作れたらどれほど気持ちいいか。指導者であればほぼ全ての人がジャイアントキリングを起こしたいと考えているはずなので。 

少人数チームが最も苦労するポイント

戦い方も限られ、最初から不利な状況の少人数チームが勝つためには様々な方法があります。(これもそのうち別の機会に書きたいと思います)

しかし、その勝つ希望すらも絶たれる絶望的な状況が時として訪れます。

それが主力選手のケガです。

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少人数チームにおいて、主力選手がケガをするということは試合そのものを諦めるくらいの危機的状況です。対戦相手が弱かったらなんとかごまかしが効くかもしれませんが、強い相手だとしっかり弱点を突かれて勝ち切られます。

それくらい主力選手のケガというのは絶対に起こってほしくないものです。

 

一般的なケガ予防

ケガを予防するためにこれまで考えたこと

主力選手だけでなく、当然、全選手にはケガで離脱してほしくはありません。ラクロスは経験値なので、ケガで離脱してしまうとどうしたって成長が遅れてしまいます。なので指導者としてはケガを未然に防ぐ方法というのも知っておかなければいけません。

そこで、ここからは僕の指導経験をもとにケガの予防法についてお話ししたいと思います。 

ケガが増えてきた

10年ほどコーチをしていますが、直近3,4年くらいでケガ人の比率が増えています。しかも、そのケガ人は1週間以上練習に参加できなくなるような長期離脱のケガ人です。

先程話したように、ケガ人が増えると少人数チームはとても苦しい状況になるため、この原因と対策を早急に立てなければいけません。

 

そこで、僕はこのケガを予防するために以下の2つを選手達に徹底させました。これを徹底させるように促したのは4年くらい前からです。

①練習前アップと練習後ダウンを綿密に行う

②筋トレによるカラダ強化

 

ちなみに、結論から言うとこのどちらも効果は出ませんでした。むしろケガ人が増えてさえいました。。 

スポーツ科学や理論は現実的ではない!?

僕は大学時代にスポーツ科学を専攻していたので、スポーツの理論にはちょっとうるさいです。指導をする上ではこれまで勉強してきた様々な理論を伝えることで効率よく選手達を育てたいと思っています。ところが、実際に指導者として教えていると、「本当にその理論は正しいのか?」と疑う場面が増えてきました。

このブログでも様々な経験談を載せていますが、僕の指導は

理論をもとに実践

壁にぶつかる

"現実的な"指導法の確立

という流れで自分のオリジナル指導法ができています。

 

今回のケガ予防もまさにその類で、

ケガを予防したい

理論的にはこうすべき

実際にやってみた

うまくいかなかった

という流れになってしまいました。

毎度毎度、スポーツ科学とか理論とか何なんだろうと思ってしまうくらい現実は難しいです。。

ゼロから考えてみた

ありきたりなケガ予防をしてもうまくいかないので、実際にゼロから細かく考えてみました。

 

ケガの種類

まず、選手達がどんな状況でケガをしているのか考えることから始めました。

(ちなみに、現在岩手大学ではケガ人のリストをトレーナーが作り、受傷した状況や受傷箇所、復帰までのおよその期間をデータにまとめてくれています)

そのファイルデータを見たり、実際にこれまでのケガ状況を見たりした結果、ケガの種類は大きく分けて2つに分類できると考えました。

それは

  • イリーガルなケガ
  • リーガルなケガ

の2種類です。

つまり、不慮の事故(イリーガル)とそうでないもの(リーガル)です。

 

不慮の事故のケガは防ぎようがありません。例えば、対戦相手からの悪質なファールです。別のスポーツで言うと、野球のデッドボールもこれに当てはまります。このような状況でのケガは日頃の行いだけではどうしようもありません。せめてもの予防としては鋼のボディを作ることくらいかもしれません。

逆に不慮の事故でないもの(リーガルなケガ)の例としては、切り返した瞬間捻挫したとか、接触プレーでバランスを崩してケガをした、というのが当てはまります。大事なのは、自己責任のケガだけでなく対戦相手からの正当なプレーのもとケガをしたものもこちらに含まれるということです。(この切り分けは重要です!)

 

いかにリーガルなケガを防ぐか

ケガの状況を分類したとき、イリーガルなケガを防ぐのは容易ではないので、リーガルなケガをどれだけ予防できるか考えてみました。

…が、これが相当に難しく、さっぱりわかりませんでした。

なぜなら、リーガルなケガの予防は先程話した

①練習前アップと練習後ダウンを綿密に行う

②筋トレによるカラダ強化

でまさに解決しそうな気がするからです。

 

そこで、全く別視点で考えてみることにしました。

その視点が、

  • ケガをしない人はどんな人?
  • 全然ケガをしなかった世代でやっていたことと現在の違いは?
  • ケガをする場面はどんなとき?

という視点です。

 

ケガをしない人はどんな人?

全然ケガをしない人を考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが僕自身でした。僕は現役時代に1週間以上離脱するようなケガをほとんどしたことがありません。長期離脱するケガは、足を踏まれて靭帯が傷ついたとかクロスごとアゴにタックルされて6針くらい縫ったといったイリーガルなケガばかりで、リーガルなケガでの長期離脱はほぼありません。数年前に道端で転んで骨折しましたが、それも人生初めての骨折でした。(キレイに足首折りました)

 

そんな自分自身の経験から確実に言えることは、

カラダがかたい≠ケガしやすい

ということです。

 

僕は長座体前屈をしても足先に手が届かないくらいカラダがかたいです。でもあまりケガをしません。

昔大学の授業で学びましたが、カラダが柔らかい人の方が大きなケガをしやすいというデータもあるようです。カラダが柔らかい分、曲がってはいけないところまで曲がり切ってしまうとか…考えただけでゾクッとします。

 

そんなこともあり、柔軟性を高めることはケガ予防には直結しません

 

なので、練習前アップをちゃんとやろうが、練習後ダウンをしっかりやろうが"直接的には"ケガの原因とは関係ないのです。

(アップやダウンを軽視しているわけではありません。それらはもちろん大事です!ただ、ケガをするときはアップやダウンとは別の要素が大きく絡んでいるということです) 

全然ケガをしなかった世代でやっていたことと現在の違いは?

岩手大学のコーチを務めてから約10年ほど経ちましたが、その間で長期離脱のケガが少ない世代が2世代だけありました。

その2つの世代を思い返してみると、他の世代と比べて練習がハードだった印象を持っています。

練習がハードというのは肉体的にも精神的にもです。仲間同士でもガチガチ当たるし、厳しい言い合いも一番多かったです。

ただ面白いのが、だからと言ってチームがバラバラになることもなく、全員が納得してまとまっていました。(この「チーム力」を作る方法についてもまた別の機会に載せたいと思います)

 

ここでの注目ポイントは、

練習がハードなのにケガが少なかった

ということです。

 

これに気付けたことで「本当のケガ予防」が見えてきました。 

ケガをする場面はどんなとき?

ケガをする場面を考えたとき、

試合やゲーム形式の練習でケガをする

パターンが圧倒的に多いことに気付きました。

 

なぜ練習よりも試合(試合形式)でケガをするのか?

これは僕の仮説ですが、おそらく

強度の差

があるからです。 

強度の差によるギャップ

強度の差が生まれているとはつまり、

  • 通常の練習→低い強度
  • 試合(試合形式)→高い強度

になっているということです。

普通に考えれば、練習よりも試合の方が強度が高くなるのは当然です。

問題は、

その強度に差があり過ぎる

ということです。

強度に差があり過ぎるために、強度の低い練習から高いものに急に変わった時に、カラダと脳がそのギャップに追いつかずケガをしているのです。 

不意打ち

また、強度のギャップの他には不意打ち的なケガも多いです。例えば、ボールをキャッチしたら実は敵がものすごい近くまで詰めていて、予想外なタイミングでプレッシャーを喰らってケガをした、などです。

この不意打ちのケガはダメージが大きく、試合のような強度の高い場面で起きがちです。特に対戦相手とのメンタリティに差があると不意打ちを喰らいやすくなります。 

攻めのケガ予防

ケガの原因

以上をまとめると、ケガの原因として考えられるのは、

①運動強度のギャップ

②不意打ち

の2つだと僕は考えています。

そして、①はどちらかと言うと「カラダ」、②は「メンタル」の要素が含まれているように感じます。

 

つまり、①は低い強度で慣れてしまったカラダが急な高い強度で悲鳴をあげる、②は低い意識や集中力(メンタリティ)で取り組んだ結果、予期せぬダメージを喰らう、ということです。 

結局のところ、ケガを予防するには…

自身の経験とこれまでの指導経験からケガの原因は特定できました。

ケガの原因が特定できたので、その対策としては

①練習強度を上げる

②メンタリティ高く取り組む

が今の僕のベストな結論です。

 

練習の強度を上げるとカラダがその強度に「慣れる」ため、試合の強度にも耐えられるカラダができます。※注意しなければいけないのは、急に強度を上げないことです。徐々に強度を上げるように気を配る必要があります。

また、メンタリティを高くすることで練習や試合の意欲と強度、集中力が高まります。

メンタリティを高めるのは容易ではありませんが、ここはコーチの腕の見せどころです。練習の意図、目指すもの、現状分析、甘さの指摘…などなど様々なポイントから選手のメンタリティを高く保たせなければいけません。

例を挙げると、てっとり早いのは

個人面談

です。

僕はこれ以上に選手達のメンタリティが高くなる方法はないと思っています。

(もちろん、ただの個人面談ではダメなので、"チームとして勝つための個人面談"を行います)

 

このように、強度とメンタリティを上げることでチームのケガは予防できます。もちろんこれはあくまで僕の経験から導いた結論なので、理論的にはどうかわかりませんし、一般的なケガ予防とは全く逆だと思います。

が、この"攻め"のケガ予防こそ指導現場での現実的なケガ予防だと僕は確信しています。 

見逃してはいけないもう一つのケガ対策

最後に、ここまでケガ対策として「予防する方法」について説明してきましたが、「ケガをした後の処置」も重要です。

岩手大学ではまさにこのケガの後の処置について最近指導したばかりですが、

「ケガが完全に治りきるまで一切プレーしない」という自己判断は間違っています。

 

病院に行って診断を受けて「これはどうしようもない」と判断できるケガを除き、ほとんどの軽いケガ(打撲や違和感)は痛みが許す範囲で負荷をかけるべきです。テーピングなどのサポーターをつけて可能な範囲で練習に参加すべきなのです。(僕やAC野本の経験から導いた結論です)

これを「完全に治りきるまで練習しない」と考えている選手があまりにも多かったので、

「多少のケガはあえて抱えながら練習に参加し、練習後に最適な処置(アイシングなど)をしろ」

と伝えました。もちろん限界と思ったら途中抜けOKです。

結局のところ、「ケガの基準が甘すぎる」のです。そんな選手は見てはっきりとわかるくらい成長が遅れています。

このケガの基準の甘さもメンタリティ対策で解決するほかありません。

 

ちなみに、現在ではケガをした後のRICE処置はもう古いとされていて、より回復を早めるPOLICE処置というのが広まってきています。

ざっくり言うと、

痛みがある程度収まったところで、患部周辺の痛みが許す範囲で適度に負荷をかける

=Optimal Loading(適切な負荷)

をアイシングや圧迫等と並行して行うという理論です。

つまり

「"まだ少し痛い"くらいならやれ!」

ということですね。

これに関しては経験に理論が追いついてきたような気がします。

 

このように、今ある理論はすべてが正しいものばかりではありません。それらを鵜呑みにするのではなく、時にはそれらを疑い、実践してみると、経験則から本当に効果がある別の方法を導くことができるかもしれません。